海に花、空に指先、地に霞

その人は、褐色の肌と漆黒の髪をしていて、どう見ても日本人ぽくない。
瞳は、けぶるような緑。
…顔半分が…眼帯で覆われている…。
ちょっと変わった…漆黒の民族衣装みたいなのを着ている。

彼は微動だにせず、背後から凪世の首に剣をつき立てていた。
そして低く凄んだ。

「退がられよ……、海の王…」

「思ったより早かったね。シン」

刃の鋭さに負けない、彼の目線や声にもまったく動じずに、凪世は両手を挙げて溜息をつく。

チラリと、その褐色の肌の男は、私を一瞥した。
私は身を強張らせる。
男は、私の様子を本当に無感動に見つめているくせに、さらに凪世に凄む。

「花嫁殿が怯えておいでだ…。何をした?」

「キスしただけだよ」

…な………!
途端に顔中に血が上った。
真っ赤になって反論しようとする。
確かにそう…かもしれないけれど!!
あんな…何事もなかったように…!!

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