海に花、空に指先、地に霞



大きな大きな手を感じて。
私は、俯いたまま、キュッと口唇を噛む。

…ひそかに衝動に耐えるために。


でも。
…でも。

「…し……森さん」

「何だ」

「……ギュッて……して、もらって……いい?」


駄目だ。
…甘えたい。

衝動が…理性に勝る。
すごくすごく、甘えたい。
…この人に。


でもすごく恥ずかしい。

返事も何もしない森さんを、そっと目だけ上げて見ると……すごく驚いたような顔で、固まっていた。

「…う、嘘!冗談!!ごめんなさい!…お、おやすみなさい!」

慌てて立ち上がって小走りで部屋を後にする。襖を開けて、体半分を廊下に出したとき。

背後から褐色の手が伸びてきて、ギュッと…抱きすくめられた。

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