海に花、空に指先、地に霞

日々が巡る。
何事もないように、だけど微妙な変化を伴って。

変わったことといえば。

私は森さんの部屋に入り浸ることが、多くなった。
前は1日に1回程度だったけれど、今は暇さえあれば、彼の部屋を覗く。

外出が多い彼は不在のことが多かったけれど。

相変わらず、夜は眠れない。

いつでもどこでも眠れるという特技で持ってしても、連続した睡眠をとるのが難しい。
でも時間がたてば落ち着くだろうと、何とか自分を言い聞かせる。

夜中に目を覚まし、呼吸を落ち着ければ。

「頼っていい」と言われた凪世の言葉がよぎるけれど。
…それは怖い気がして。

私は夜にじっと沈むだけ。


再びにぎやかになった家。
私は、これ以上、何を望むというのだろう。
本当はもう、それだけで十分すぎるほど、贅沢なのに。

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