海に花、空に指先、地に霞


寝不足で注意が散漫しているのか、転んだり怪我をすることが多くなった。
…廊下で足がもつれて転んだり、校庭で強風に煽られた木の枝で手を切ったり。
帰り道で水溜りに足を滑らせたり。

そのたびに、梢子ちゃんが手当てをしてくれる。
時には、転びそうになる私を支えてくれたりして。

気をつけてね、って笑顔で。
こっちが守ってやらなきゃって思うくらいの華奢な子なのに。
…本当に、天使みたいな子だと思う。

痣や切り傷を作って家に帰れば、とくに天鳥が、鈍くさいっていって笑う。

小さな、傷。
でも、彼らにしてみたら、十分笑いの対象だ。

…もう少しで、父と母の命日。
遺骨が完全に上がっていないから…法事はしないことに勝手に決めた。
ただ、一人で静かに祈ろうと思う。

たくさんの人のやさしさや気遣いとか、…あの凍った日以来、あまり上手に感じられなかったあたたかい気持ちを、再び感じることができるようになりましたって。
1年かけて、ようやく。

そう、報告しよう。


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