海に花、空に指先、地に霞
鈍くさいことを除けば、学校は平穏で平凡だ。
みんなが同じように、テストに悩んだり、進路に迷ったり。
…私は就職コースだから、比較的のんびりとしているけれど。
あの、不思議な王様たちに翻弄されない唯一の空間。
まだ5月だっていうのに、今日は真夏のように暑かった。
じっとりとまとわりつくような汗が、夕方の風にさらされる頃。
平穏な気持ちで授業を終えて、のんびりと梢子ちゃんと一緒に帰り支度をしていたとき。
………それが破られた。
「沙杏ちゃん!! 校門で…カレシ待ってる!!」
もう先に帰ったはずの…、いつも一緒にいる晴美ちゃんと陽子ちゃんが、教室に舞い戻ってきた。肩で息をしながら、私に向かって叫ぶ。
お弁当箱(凪世手製)を、かばんに詰めようとしていた私は、間抜けた声で返事をした。