海に花、空に指先、地に霞
「はぁ?」
「沙杏ちゃん、彼氏いたんだ。…そうゆう話、全然しないから」
梢子ちゃんが、目をまるくしてこちらを凝視している。
「いや…。人違いじゃない?」
私は首を捻って、興奮状態の二人に、違うよって言う。
「でも沙杏ちゃん呼んできてって言われたよ! すごくすっごくカッコイイよね!! ね、紹介してよ!」
女の子ならではのテンションと高い声で、二人はキャーキャーと、頬を上気で染める。
その時。
さぁっと、血の気が引いた。
…誓って彼氏ではないけれど、…思い当たる節はある。
…誰よ!!!
学校まで来たの!
廊下に飛び出て、窓から校門を確認すると……長身の影が立っているのが見えた。
黒髪が…風に揺れている。
帰宅しようとする女の子たちの視線を集めまくっている。
な、凪世………!!