海に花、空に指先、地に霞
私は脇目もふらず、カバンを引っ付かんで、猛ダッシュで校門へ走る。
友達のことも、何もかも無視して。
必死の形相で。
校門で凪世の姿を確認した。
さらに、スピードを落とさずに彼の腕を掴んで、そのまま引っ張ったまま、さらに走った。
「ちょ、沙杏ちゃん?!」
女の子たちの興味の視線が痛いほど注がれていた。
それを振り切るように、凪世の抗議の声も無視して、全速力で、走る。
…しばらく走って。
生徒が少なくなる、海沿いのガードレールのそばまで来たところで、足を止める。
息がゼイゼイ上がっていた。
そこでようやく、凪世の腕を放した。
凪世はケロリとしていた。
大きく深呼吸をして、乱れた息を整える。
「……ちょっと!! ルール違反にも程があるわよ!!!」
「…なんで? 迎えにきたのに」
「いりません! 迎えはいりません!!登下校は一人でできます!!!」
「…最近、沙杏ちゃん、よく転んだりしてるでしょ。危ないから」
「自分で! 気をつけます! 心がけてます! でもどうしてだか転ぶの!!」
「……今日はいいでしょ。一緒に帰ろう?」
すっと彼が、ごく自然に私の手を取ろうとした時。
「沙杏ちゃん!」