海に花、空に指先、地に霞
「…沙杏ちゃん?」
「だ、だって!……なんか!」
しどろもどろになる私に、じっとりとした目線を向ける凪世。
そんな私たちの様子を、梢子ちゃんはしばらく見ていた。
…一瞬だけど。
とても冷静な目で。
それに気づいたとき。
まるで幻のように、彼女からその目は消えて。
いつもの、明るく可憐な笑顔だけが残っていた。
「仲良しなのね。…じゃ、私行くね。バイバイ。ナギセさんも、さよなら」
「あ、うん。…ありがとう!」
手を振る代わりに、お弁当箱をゆらゆら揺らす。
再び、彼女はキレイに笑って。
背を向けて、走っていく。
潮風に靡く、彼女の黒髪は…本当にキレイだった。