海に花、空に指先、地に霞
金魚みたいに口をパクパクさせていると、凪世が再度私を見て苦笑した。
「青くなったり赤くなったり、忙しい子だね」
「………貴様…」
凪世は苦笑したあと、今度は意識を、背後の…シンって人に向ける。
「あのさ、シン。これ、早いモン勝ちでしょ? もしかしてアトリも来てる?」
「空の王か……? 知らぬ」
剣呑な空気が漂う中、それでもリラックスして見えるのは、馴染み深い仲といった風情の会話。
私一人が緊張している。
…ちょっと…やだ…
どうゆうこと…?
会話の中に、もう一人…登場人物…いた…。
「ちょ、ちょ……! あ、あ、あんたみたいなの、…何人もいるわけ…?」
さっき馬鹿にされたばかりだけど、私は青くなって凪世に問いかける。
すっかりどもりながら。
凪世が答える前に、ぶっきらぼうに答えたのは、いまだ剣を突きつけている男。
「安心なされよ、花嫁殿。我はこのような男ではない」
「アトリはオレより相当だと思うけどね…」
私は頭を抱えた。
もう何がなんだか分からない。
でも、災厄のシグナルが頭の中でグルグル鳴り響いている。
こうゆうときは、さっさとパニックに陥ってしまったほうがいいんだ。きっと。
遠慮せずに。
彼らだって、人の家の玄関で好き放題してるんだし。