海に花、空に指先、地に霞


一人になってから、淋しさを紛らわすために買い集めたDVDが、思わぬところで役に立っている。…もちろん喧嘩もタネにも。

私たちは、本当にこんな些細な喧嘩をよくする。
一番、遠慮なしに文句を言えるのが天鳥だから。
…ひどいときは、取っ組み合いになる。
もちろん、天鳥のほうが力が強いし、最終的にセクハラされるから…私が負けるけど。
だから、悔しさ紛れに、森さんに愚痴をこぼすんだ。

凪世や森さんは、そんな私たちを見て「よく飽きないね」って苦笑する。

「二人とも、玄関で喧嘩しないで。沙杏ちゃん、もうご飯だから着替えておいで。…アトリ。ちょっといい?」

「…何」

凪世に促されて、二人でリビングに戻っていく。

私は、仕方なく自室に戻って、着替えを済ませることにした。

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