海に花、空に指先、地に霞
制服をハンガーにかけて、クローゼットへ。
ざっくりしたサマーセーターとジーンズを着て、一日の疲れを抜くように、ベッドに腰を下ろした。
カピバラのクッションを膝に抱いて。
ふと、机の上に放置した、かばんとお弁当箱の巾着が目に入る。
一人の少女の残像が浮かんだ。
…梢子ちゃん。
可愛いもんね…。
「遊んでる」って自分から言う凪世の目に留まっても、不思議じゃないのかも。
…でも。
なんだか、いろいろなことがゴチャゴチャになりそうで………イヤだ。
梢子ちゃんは、凪世のこと……どう思ったのかな…。
何だか、妙に見つめていた気がする。
タイプ…なのかな…?
…そういえば、私は彼女のこと、表面的なこと以外、よく知らない。
一緒の時間を結構過ごしているのに、いつも他愛のない会話しかしないから。
人付き合いの下手さが、こんなところで露見するとは思わなかったなぁ…。
どうしよう。
凪世のこと、…好きって…言われたら。
ふと、灰色の気持ちが胸に渦巻いたとき。
階下から、凄まじい怒声が響いた。