海に花、空に指先、地に霞
でもまだ。
視界が回って、頭を起こすことができない。
現状を理解することも。
同じように真横で足を投げ出している少年は、上半身を捩って、私の上半身を覆うように、覗きこんでいる。
…近いって、天鳥。
彼は、私の頭を挟むように両腕を置いて、体重を支えている。
そしてそのままの体勢で、苦笑した。
「ごめん。咄嗟だったし、もう頭にきてたから、うまく制御きなくて。…気分悪い?」
「ちょ、ちょっと…頭、クラクラする…?」
「そのまま横になってりゃ、すぐに治まるよ」
「…な、に? どうなったの…。…ここ、どこ?」
「どっかのビルの屋上。…寒い?」
「ううん…。気持ちいいけど…」
昼間に、汗をかいたから。
なんだか未だに太陽の熱が体に篭っているようで。
夜風がそれを丁寧に濯いでくれるようだ。
「空の王家の力のひとつ。…便利でしょ」
「…? 何、どうゆうこと」
寝転がったまま、くるくる回る視界を、なんとか止めようとしていて。
天鳥の言葉が、上手に耳に入ってこない。