海に花、空に指先、地に霞

簡単に言えば、瞬間移動ってヤツ?って天鳥が笑う。
体を霧状に分解して、空間を飛ばせるんだ、と。

「人を巻き込んでやるのは初めてだから、加減がわからなくて。下手すると、再構築できなくて、体が空気にバラバラに溶けちゃうんだけどさ」

「そうゆう怖いこと…言うの、やめて」

「…冗談だよ。嘘」

ようやく。
ようやく……視界が正常に戻ってくる。

大きくゆっくりと呼吸をする。

真横にだらしなく座っている、空の王様に目を向けると。

…天鳥は、まるで夜光虫のようだった。

闇夜に浮かぶ、金色の髪。
夜風に遊ばれて。

たゆたう…金色の夜光虫。

…………儚くて。


遠いところから…地上から、車の行き交う音がかすかに聞こえる。
…遥か彼方のように。

ビルの屋上は…切り離された、空間のよう。

「空、近い……。…星、キレイだね」

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