海に花、空に指先、地に霞
ぼんやり、夜風を感じて、空を仰いでいると。
チラリと横目で睨むように目線を投げられた。
「…あんた、この状況で、よくそんな間抜けたこといえるね」
その口調は、いつもの……天鳥だった。
だから、いささか気が抜けた。
…だから、私もいつものように、返した。
「だって! いきなり…む、…蒸し返すのも、どうかなって…」
「原因、知りたいって顔してるくせに」
「そりゃ、知りたいけど…」
さっき、なんだか頼りなさそうに見えたんだもの。
夜に消えていきそうな。
それこそ、大気に溶けてしまいそうな。
ちょっとだけ間を置いて、私は口火を切る。
「凪世と…何があったの…?」
「………別に」
面倒臭そうに、天鳥が膝を抱えた。