海に花、空に指先、地に霞
ぐちゃぐちゃに入り混じった感情で、私はゆっくり覚醒しはじめる。
そっと、目尻を指先で拭ってくれた人が居た。
大きな……無骨な…手。
でも指先だけでも、すごくあったかい。
…うれしい。
うっすらと目を開くと、目の前が翳っている。
深い色の肌をした人が、片眼で心配気に覗き込んでいた。
「……誰………?」
さっき…触ってくれた……?
「…………幸せ…」
そう無意識に、呟いたら。
緑色の目がちょっとだけ、見開かれた。
次第に覚醒水準が高まる。
「…あ、起きた? 沙杏ちゃん」
リビングのソファの上に横たわっていた。
凪世が、…冷たいタオルで私の額を拭く。