海に花、空に指先、地に霞
王様、襲来


爽やかに晴れ渡った4月の朝。

私が住む海沿いの街に、鮮やかな太陽の光と、やさしい潮風が舞い込んでくる。

空は水色の絵の具を溶かしたような、透明さを誇って。

生まれ変わったばかりの若木や草花が、さらさらと淡い緑を揺らしている。


私は今日こそ家中の掃除をしようと、朝から張り切っていた。

春休みも、もう終わり。
明々後日から学校も始まる。
制服に袖を通すのも、いよいよ最後の1年。
就職するつもりだから、受験生ではないけれど。

気持ちを切り替えて、さっぱりしよう!

まずは、1階の仏間へ足を運び、仏壇に合掌する。

「おはよ。父さん、母さん。今日はいい天気」

写真の中で笑う父と母は、いつまでも仲良く並び。
永遠に、私の問いかけには答えない。

まだ…あの事故から1年も経っていないね。

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