海に花、空に指先、地に霞


そりゃそうだ。

一目で好きになってもらえるような、容姿でもないし。

たった2日ほど、同じ家にいただけだ。


私だって……誰も、好きなんかじゃ、ない……!


ただ。


「なんか…私、…すごく……ないがしろにされているような…」


ただ、人が…。

誰かが。

「なんで? こっちは結構君に合わせて譲歩してるよ?」


誰かが、家にいる感覚が。


…うれしかっただけ。

きゅっと口唇を一本に結んで、真っ向から凪世を睨む。

相変わらず、彼は不思議そうに私を見ていた。




「……誰も、選びません」



途端に、凪世も森さんも、顔色が変わった。

< 45 / 164 >

この作品をシェア

pagetop