海に花、空に指先、地に霞
そりゃそうだ。
一目で好きになってもらえるような、容姿でもないし。
たった2日ほど、同じ家にいただけだ。
私だって……誰も、好きなんかじゃ、ない……!
ただ。
「なんか…私、…すごく……ないがしろにされているような…」
ただ、人が…。
誰かが。
「なんで? こっちは結構君に合わせて譲歩してるよ?」
誰かが、家にいる感覚が。
…うれしかっただけ。
きゅっと口唇を一本に結んで、真っ向から凪世を睨む。
相変わらず、彼は不思議そうに私を見ていた。
「……誰も、選びません」
途端に、凪世も森さんも、顔色が変わった。