海に花、空に指先、地に霞
夜に泣いて目覚めることも増えた。
一晩に何度も。
過去の残像を夢に見るから。
母との喧嘩。
父に買ってもらった靴。
母と作ったごはん。
父に一度だけ取り上げられた携帯。
どんな夢もどんな過去の記憶も。
いつも最後はあやふやになって。
眠りながら泣くのは苦しいから。
上手に呼吸ができなくなって、
息苦しくなって目覚めてしまう。
淋しさを埋めてくれたはずのものが。
いっそうの淋しさを深めていることに
私は、気がついていなかったのだ。