海に花、空に指先、地に霞

夜に泣いて目覚めることも増えた。
一晩に何度も。

過去の残像を夢に見るから。

母との喧嘩。
父に買ってもらった靴。
母と作ったごはん。
父に一度だけ取り上げられた携帯。

どんな夢もどんな過去の記憶も。
いつも最後はあやふやになって。
眠りながら泣くのは苦しいから。
上手に呼吸ができなくなって、
息苦しくなって目覚めてしまう。


淋しさを埋めてくれたはずのものが。

いっそうの淋しさを深めていることに

私は、気がついていなかったのだ。




< 51 / 164 >

この作品をシェア

pagetop