海に花、空に指先、地に霞

夜の潮風が、街に届いていた。
空には春星が燦然と。
昼間と変わらない若木が揺れている。

春とはいえ、4月初旬はまだ寒い。

…でも、私は暑かった。

さっきからずっと走っているから。

家の一番近くのコンビニや海沿いの公園、ファミレス。

…人が居そうなところを、探して走っている。

あっという間に息が上がって、ゼイゼイ言うけれど。

取り合えず、走っていた。

闇雲っていったほうが早いくらいの行動だ。

どこにいるんだろう。

…あんな一般人くさいくせに、ケータイは持ってないんだから!
……まさか…電車とか乗ってないよね。

……でも、あんな普通ぽい人たち、家出ならやっぱり遠くに行くんじゃない?!
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