海に花、空に指先、地に霞

あわてて、私は駅の方向へと走り出す。

家から駅までは、走れば10分くらい。
いつも自転車で行くけれど、すでに家から離れているから、自転車を取りに帰ることもできない。

細い路地に入り込む。
生まれ育った街だから、地理は理解している。

…この道が、あんまり安全じゃないことも。


とくに夜は人が歩かない、この路地は…本当はちょっと怖いけど。
でも走り抜ければ、一番早い近道だから。

そう思って、必死で走っていた。




…だから気がつかなかったんだ。

ゆらり、と靄みたいなものが、足元に蠢いていたのに。

「…う、わッ!!」

その靄を足で踏んだ途端、グンと何かが足に引っかかって、盛大に前に倒れこんだ。

「いた……、なんか、踏んだ…?」

地面に突っ伏して寝転んだままの状態で、足のほうを確認する。

左足…引っかかったというよりは…掴まれたみたいな感覚だった。


なんか…ぐにゃっとした……。


……何、……コレ……。


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