海に花、空に指先、地に霞

事もなげに微笑んでいるくせに、彼の力は、すごく強い。

ビクともしない。

…やだ。
この人、本当に何なの…?
痴漢?泥棒?…ストーカー?

…どうしよう…
……怖い

でも私は出来るだけ強気で叫んだ。

「ちょ……!け、警察呼びますよ!!」

「いやいや、オレの話も聞いて?」

「結構ですってば…!!も…!……いた…!」

「あ、ごめん」

握りしめられた手が痛くて、小さく叫んだ途端、ぱっと手を離された。

…私は自分の方向に手を引っ込めようと、力を込めていたから、当然後ろにひっくり返った。

「ぅわッ……!」

「わ!ごめん、ごめんね、沙杏ちゃん!大丈夫?」

玄関に尻餅をついたままでいる、私に慌てて近寄ろうとする影。

ぞっと、背筋に恐怖感が這い上がってきた。
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