海に花、空に指先、地に霞


な、何で…?
怒ってたんじゃ、ないの?
私、一応、謝ったけど……。
何に対してのごめんなさいか…、分かっていないのに…。


地面にヘタリ込んでいる私から少し離れて、凪世と天鳥がジャレていた。

私は何だか……脱力していて。


そこへ、ニュッと横から手が伸びた。


武骨な…褐色の手が。


「森さ………ぅわッ!!」

ヒョイッと、子どもを抱っこするように、抱き上げられる。


目の前に、艶やかな漆黒の髪が迫る。

今まで見上げてばかりだった森さんを、少し上から見下ろすのは、何だか不思議な光景だ。

緑の目が…夜に輝いている。

顔の左半分を覆うような眼帯の下は、どうなっているんだろう…。

じっと見惚れていたけれど、現状にハッとする。

「…ちょ、ちょっと……?!森さん?!」

重いから!!
私、そんなに軽くないから!!
体重ばれるの、恥ずかしいんだけど!!

心臓バクバクさせて、森さんの肩を叩く。


「…帰ろう、花嫁殿。風邪を召す」


ふっと少し見上げられて、さらに心臓が跳ねた。

いつもの…鋼顔。
でも柔らかな声。

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