海に花、空に指先、地に霞

「……帰る………?」

そして。

帰ろうって…

………言ってくれた。


自然と……頬が緩んだ。


「あ、僕、10時からのドラマ観ようと思ってたのに。誰かのせいでぇ~」

森さんに抱っこされたままの私の前に立って、天鳥が口唇を尖らせる。

「……ご、…ごめん……」

珍しく……素直に謝ったつもり。

でも天鳥は、何だかじぃっと私を見ているだけだ。
無言で。

…猫みたい。
お日様みたいな、金の髪が夜風に揺れている。


目も…金色なんだ…。
でっかい目…。
フサフサの睫毛。

その目に無言で射ぬかれて、私はたじろいだ。

「ご、…ごめん、なさいってば!」

天鳥が仕方なさそうに、これみよがしにため息を吐いた。

「……ナギの後ってのが最高に気に喰わないけど。ま、いっか」

「は?……わッ!!」

グイッと胸倉を掴まれて、引っ張られる。

額に触れた金の髪が、やたら柔らかい。

でも、その感触とはウラハラに、噛み付くようなキスをされた。

「ん…ん~ッ!!」

あ、あ、あとり~~ッ!!!

細い、筋ばった手がずっと胸倉掴んでいる。
細いくせに、力は強い。
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