海に花、空に指先、地に霞
勝手なスタートライン



不安定な人間関係と、安定した日常が巡りはじめる。
爽快に晴れ渡る空の元、私は学校へ向かう。
さらさらの潮風を感じる海沿いの道を歩いて。
淡い萌黄色の制服の裾に、風がひらひら絡まって離れていく。


寝不足と泣きすぎのせいで、腫れぼったい目をしたまま済ませた始業式。
新しい教室、新しいクラスメイト、新しい先生。
心機一転という言葉がぴったりだ。

…そう。
心機一転。
学校も家も…。



始業式を終えて、新しい教室に帰って、席についていると、背後から声をかけられた。

「向神さん」

「…あ」

振り返ると。
まっすぐな黒髪を腰まで伸ばして、前髪も真一文字に切り揃えた、小柄な少女がいた。
ニッコリと可憐に笑う。
白い肌に赤い口唇が映えて、一層可憐だ。

「またクラス一緒だね。仲良くしてね」

「…うん」

1年の時に、同じクラスだった。
かわいいし明るいし、優しいから、男子から絶大な人気を誇っている。

たしか…ショウコ、ちゃん。
雪村梢子。

女の私から見たって、かわいいと思う。

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