海に花、空に指先、地に霞
始業式を終えて、私は海沿いの細い道をとぼとぼ歩く。
幾度も幾度も。
頭の中で木霊する、フレーズ。
魂を巡らせる。
さわり、と潮風が髪を揺らす。
ガードレールの向こう側。
狭い水平線が微かに。
押し込められたような、海があった。
入り組んだ岬の一端。両側にグッと荒い岩が迫っている。
灰色の粗い小さな砂浜。
子供の頃から、そこで何度も遊んだ。
砂場として。
赤いバケツとスコップを持って。
小魚や蟹…貝もいたな…。
お世辞にも…綺麗とはいえない海の風景だけど。
私には、馴染みの海。
毎日見ているのに、とても懐かしい気持ちになるのは、なんでだろう……。
あんな話を聞いたからかな……。