海に花、空に指先、地に霞


カラカラと玄関の引き戸を開いて、小さく呟く。

「ただいま……」

しんと静まり返った家に向かう、惰性の習慣。
帰宅瞬間の家の中は、どうしてこんなに暗いんだろう…。

「あ、おかえり」

「…………!」

玄関でぼうっとする私に明るい声が届く。

顔をあげると、ペタペタと廊下を歩く…天鳥がいた。

リビングに行こうとしていたらしいけど、立ち竦んでいる私を、キョトンとした顔で見咎めた。

「何」

「…な…!ちょっ…あ、あとり!服着てよ!」

二度、びっくりした…!

「何。…意識しちゃってんの?」

ポタポタと髪から雫を落として、肩にタオルをかけて。
ニヤリと挑発的に笑う。

多分シャワーでも浴びたんだろうけど…上半身は裸のままで。
下はジーンズをだらし無く穿いている。

「違っ……バカ!!」

天鳥の笑い声を背に、慌てて部屋へ駆け込む。

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