海に花、空に指先、地に霞

やっぱり何となく…目のやり場に困る。男兄弟がいない…というか、一人っ子の私には、慣れない状況。

ソファの空いているスペースに腰を下ろしながら、天鳥に怖ず怖ず話しかける。

「…ねぇ、ちゃんと服着てよ。……気に、なる」

「ん、髪乾いてからね」

相変わらず、テレビに…夕方の再放送ドラマに夢中のようで。

私は仕方なく、天鳥の肩にかかっているタオルを取った。

途端に軽く睨まれる。

「何」

「髪も!…ポタポタしてるの、気になるの!」

照れ隠しもあって。
天鳥の頭に乱暴にタオルを被せて、ガシガシ、わざと乱暴に天鳥の頭を拭く。

タオルの下で俯いた彼が、どんな顔をしているのか知らないけれど。

私はお構いなく、両手を動かす。

何だか居心地が悪い。
…だっていつも小煩い天鳥が無言だったから。

「…何よ!乾けばいいんでしょ!ドライヤーあるのに!不精なんだから!」

心の中で。
金の髪がしっとりと濡れて、本当にキレイだって思っていたけれど。

「……ドライヤー、嫌いなんだよね。…ちょっと。あんま乱暴にしないでよ。あんた、馬鹿力だね」

そういいながらも、じっと為されるがまま。

…本当に猫みたいなヤツ!


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