海に花、空に指先、地に霞

胸の中でグツグツ怒りがこみ上げたけれど、相変わらず、真っ赤になって、わなわな震えて、上手に言葉を発することができない。
吃れば、それもまた馬鹿にされるんだし!

精一杯の仕返しとばかりに、怒りを込めて、バチン!! と彼の頭をタオルで叩く。

天鳥が叩かれた頭を抱えて、痛いじゃん、と笑う。

「…もう! せっかく人が親切にしてやったのに!」

「うん。あれは気持ちよかった。…またやって」

不意に、にっこりと………天鳥が、快活な笑顔を見せた。

あんまりキレイに笑うから…。
それこそお日様みたいな笑顔だったから、面くらって、さらに言葉を失っていると、リビングの入り口から声がかかった。

「…何じゃれてるの」

声の方向を見ると、黒髪で長身の男が、その美麗な顔に似合わない、スーパーの袋を抱えて立っていた。
訝しそうに、私たちを見ている。

「…な、ぎせ!」

…か、買い物に行っていたのか…。
なぜか、再び顔が真っ赤になった。

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