海に花、空に指先、地に霞

「…………し、森さんは…どこに行ったの?」

「ああ、今日は朝からいないな。ほら、地震あったし」

「…そ、そう」

ああ、…そういえば。
朝ニュースでやっていた。
天災も管理するというから……その所為なのかな?
でも、実際何をしているのかは、まったく聞いていなかったから、相変わらずピンとはこない。

………今。
聞きたいことは…そんなことじゃない。
でも一瞬だけ、気持ちが逃走してしまった。

心臓が、さらにいやな音を立てはじめる。
手にじっくりと…冷たい水を握る。

……聞きたい。
でも…怖くて。

聞いていいことなのか……わからない。

「シンに何か用だった?」

「う、ううん、そうじゃないけど…。……あの、……あのね」

フライパンからあがる湯気と音。
その向こうで、ようやく、凪世がこちらへ向かって。
ゆったりと、微笑んだ。

「………何?」

ゴク…と、息を呑んだとき。

「あの……、…う、わ!!」

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