海に花、空に指先、地に霞
ちょっとだけ張り詰めた私の空気を壊すように。
後ろから、何かがぶつかってきて。
突然、羽交い絞めにされた。
…もちろん、すぐに天鳥だと気が付いたけど。
「ちょ、ちょっと! 危ないでしょ! 包丁、つ、使ってるのよ?!」
重大な決意を分断されたことと、突然に人の体温を感じたことで、私はしどろもどろになった。
腰の辺りに手を回されて、私の腹の上で組まれている。
彼は顎を私の肩に乗せて、耳元で話す。
柔らかな髪が…私の首筋をくすぐって。
「服着たよ~って、言おうと思って」
クスクス、笑いながら。
絶対、からかうために!
後ろから抱きつかれて、私は平静でいられない。
あたふたと、振りほどこうとする。
でも意外としっかり組まれた手は、そう簡単には離れなくて。