海に花、空に指先、地に霞
「そ? 僕はまた、女のとこかと思った」
「……アトリ」
低く嗜めるような、凪世の声。
言葉の意味を上手く読み込めない私に。
天鳥は、明るい矛先を向ける。
「沙杏知ってる? ナギ、地上に囲っている女、山ほどいるの」
「………し、らない…」
か、囲う……?!
何時代の話、と愚かなツッコミが脳をよぎる。
思わず、凪世を見やる。
美貌の王様は、冷たい顔をしたまま、パスタを茹でていた。
…こちらを少しも見ないで。
「アトリ、やめろ。沙杏ちゃんも、本気にしなくていいから」
「本当のことじゃん。あとね、昨日のも、ナギの作戦だよ」
「さ、さくせん…?!」
「あんた、押しに滅法強いから。ちょっと引いてみようって。…本気であっさりひっかかってんだもん。馬鹿だよね。…ナギは女に関しちゃ百戦錬磨だよ」