海に花、空に指先、地に霞
…また作戦とか、嫌だったし。
凪世との駆け引きって……なんだか怖い気がして。
しぶしぶ、棚から4枚の平皿を取り出した。
それから、夜の帳が完全に街を包んだころ。
仕事帰りのお父さんみたいに帰宅した森さんも含めて、一緒に食事をして。
その頃には、凪世も天鳥も普通に戻っていた。
さっきのちょっと緊張感のある会話など、何もなかったように。
そうして、しばし寛いで、お風呂に入って。
自室に戻ろうとした私に、凪世が階下から念を押した。「さっきの約束、有効だからね」と。
自室にこもって髪を拭きながら、言葉を反芻する。
…デート、か。
……何を着ていけば、いいんだろう?
そういえば、人生初だな…。
…なんだか、ちょっと浮かれてしまった。
凪世との、というわけではなく。
”デート”という単語に。
だから。
リビングで交わされていた会話と険悪なムードなんて、当然気が付きもしなかった。