海に花、空に指先、地に霞


昔はそんなにでもなかった。
人付き合いがますます希薄になったきっかけは…両親の事故だ。

あれ以来、私を避ける人が増えた。
今でこそ、そんなことはないけれど、事故直後はとくに。

多分、みんなはどうやって上手に気を遣っていいのか分からなかったんだと思う。
いっぺんに両親を亡くした私を、どうやって哀れめばいいのか、分からなかったんだと思う。

でもその方が、随分気が楽だった。
気を遣われるのが、とても嫌だったから。
気遣いに感謝する気持ちが浮かばなかったから。

気持ちがささくれ立っていたし。

私も、どうやって自分の感情を処理していいのか、分からなかったんだ。

まだ新学期が始まって間もない頃だったから、しばらく学校を休んだ私は、すでに出来上がっていたグループから取り残されてしまったんだ。

……もうすぐ、1年になる。
初夏の……暑い、暑い日だった。
染み出す汗が次から次へと冷えて、氷漬けにされていくようだったのを、今でも覚えている。

あんなに寒い思いをした、夏の始まり。


< 95 / 164 >

この作品をシェア

pagetop