海に花、空に指先、地に霞


あっという間に日々が過ぎていく。

学校に行ったり、彼らと一緒にご飯を食べたり、映画をみたり、たまに喧嘩したり。

…家族みたいに。

でも時折セクハラされるから、やっぱり家族ではないのかも。

そして…よく見ていると。
凪世は、たまに深夜に帰ってきて…甘い香水の移り香を残していたり、ウチのじゃない石鹸の香りをさせていたり、した。
でも家にいるときは…変わらず私にやさしくて穏やかで。

どうしてだろう。
……ほんの少し、凪世が怖いと思うようになった。

天鳥とは相変わらず。髪拭いてとねだられたり、アイスの取り合いしたり、一緒に映画見て笑ったり。

…きょうだいってこんな感じなのかもしれない。

森さんとは、一日に一回、たいていは寝る前。必ず彼の部屋で会話をする。…私は正直、その時間が楽しみだった。
今日あったこととか、天鳥との喧嘩の愚痴とか。どんな話でも、静かに聞いてくれて。
最後に必ず頭を撫でてくれて、おやすみ、と言ってくれる。

一番安らげる、人。
もっと甘えたくなる気持ちを抑えるのに、苦労する。



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