世界中の誰よりも
あたしは言葉に詰まる。
別にそこまで欲しかった訳じゃない。
ただちょっと、イライラしてただけ。
見透かすような冷たい目が、居心地悪くする。
男の手を振り払おうとした時、もう一人の店員が通り掛かる。
「何だ? どうかしたか?」
胸のネームプレートには店長と書いてある。
ヤバイ。
学校や、親に連絡されるかもしれない。
あたしはどうしようどうしようと半ばパニックになっていた。
するとあたしの腕をつかんだままの男が口を開く。
「いや、何でもないです。この子知り合いなんですよ」