世界中の誰よりも

その翌日、あたしはまた本屋に向かっていた。

気まずい気持ちはあったけど、気が付けば本屋の前で立ち止まっていた。

ガラス張りの扉の向こうをこっそりと覗く。
昨日の男は居ないようだ。

少しほっとしたような、僅かに残念なような気持ちになった。

ため息を一つ吐いて、立ち去ろうとしたその時。


「懲りずにまた盗りに来たのか?」


振り返るとそこには昨日の男。今日は店のポロシャツじゃなく、制服を着ている。

よく見ればあたしと同じ高校の制服だった。
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