世界中の誰よりも

「違うもん」


あたしは夕べからなんだか胸がモヤモヤして仕方なかった。

この男に言わなきゃいけないことがあるような気がしてならなかった。


男は大して興味もなさ気に、ふーん、と呟いてあたしの頭にぽんと手を乗せた。


「あんまり悪いことするなよ」


そう言って店の中に入ってゆく。

むかつく。
子供扱いされた。

そう思いながらもあたしは男の後を追って、店に入った。


男はレジの横を抜け、バックルームに入っていく。高校の制服からポロシャツに着替えるためだろう。

あたしは昨日と同じファッション誌のコーナーに向かう。
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