世界中の誰よりも

リビングの脇を抜けると、母がソファーに座っていた。


「あら、こんな時間に帰って来るなんて珍しいわね。」

「まあね」


面倒くさかったあたしは適当に答えて二階に向かう。

すると母が後ろから声をかけてきた。


「暇ならお醤油買ってきてくれない?」

「やだ」


珍しく早く帰宅したからって、ここぞとばかりに用事を押し付けるのは止めて欲しい。


「夕飯作れないじゃない。行ってくれないなら勉強しなさい」


自分で行けば良いじゃん。
専業主婦のくせに。


「勉強するから。だから行かない」


あたしの言葉を聞いて、母はしぶしぶ自分で行くことにしたみたい。
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