世界中の誰よりも
「いつも遊び歩いて、家の手伝いもしないでだらけてばかり。いい加減にしなさい、幸」
父の説教は料理をまずくする最低のスパイスだ。
あたしはイライラがつのって、持っていた箸を強く握る。
顔を合わせれば説教ばかり。やっぱりこんな家に居たくない。
「あたしにだって色々あるんだからほっといてよ」
そう言うと残りの料理を慌ただしくかきこんだ。
一秒でも早くこの場から離れるために。
食べ終えると、ごちそうさまもいわずに席を立つ。
「待ちなさい、幸!」
あたしは無視して部屋に戻った。
拓海や多喜さんや祐司は、あたしの名前を誉めたけど。
父に呼ばれる【幸】って名前は、世界一嫌いだと思った。