世界中の誰よりも
・夜遊び

部屋に戻ったあたしはケータイを手に取り、電話帳の画面を開く。

通話ボタンを押すと、一定のリズムが耳に届き、あたしの心臓を少しだけ落ち着かせた。

そしてその音が途切れると、低い声が聞こえた。


『もしもし』


あたしはその声に、なぜだか泣いてすがりたい気持ちになった。

むちゃくちゃに泣いて、慰めて欲しいと思った。


『もしもし?』


何も応えないでいると、その声はもう一度あたしに問い掛ける。


「……もしもし」

『ん、幸か?』


絞り出したみたいなあたしの声だけで、あたしだって分かってくれたんだ。

なんか、嬉しい。


「うん。そうだよ祐司君」
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