世界中の誰よりも

「お父さんや、お母さんに名前を呼ばれる時はたいていお説教で」

「うん」


あたしは祐司が食べて散らかったポテトの残りを見つめる。


「親に名前を呼ばれると、あたし、嫌な気持ちになってしまう」


これは、夕べ気づいたことだった。

会話のほとんどが説教や小言だから、無意識にあたしは嫌悪感を抱いていた。


「そりゃ、好きになれないだろうな。名前」


祐司のその言葉に、あたしはなんだか許された気持ちになれた。

分かってくれる人が居る。

そのことがあたしを安心させた。


「拓海君がね、昨日言ったの。いつか分かる時が来るって。あたしが名前を好きになるって」


あたしは控え目に祐司と目を合わせる。


「あたし、好きになれる気がしない」
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