世界中の誰よりも
あたしは例によって不満げな顔を見せたけど、祐司は構う様子もない。
しぶしぶあたしも同意し、祐司の隣をノロノロと歩く。
「じゃあな。真っ直ぐ帰れよ」
子供をなだめるみたいな笑顔を向けて、祐司がさっと右手を上げる。
「はーい」
あたしが家の方に足を向けたのを確認すると、祐司も自宅の方へと歩き出す。
あーあ、つまんない。
辺りは静かな住宅街。
怠そうに歩くあたしのローファーの鳴き声が高らかに響く。
周りの家の窓からは、温かな光がこぼれている。
その光から流れ出るように、それぞれの家族の楽しそうな話し声が聞こえた。