世界中の誰よりも
あたしの足は重くなる一方で、ローファーの鳴き声も徐々に弱まる。
まだ、帰りたくないな。
あたしはくるりと方向転換した。
祐司の真っ直ぐ帰れって言葉を思い出したけど、あたしは心の中で言い訳を重ねる。
今夜だけだから。
ちょっと時間潰したら帰るから。
あたしはまた街に向かった。
特に目的はないけれど。
無機質な光と、他人に無関心な顔で溢れる場所に行きたかった。
適当にレンタルビデオ店に入って、新作DVDの解説を熱心に読んだり。
名作シリーズの棚でに並ぶ映画監督の名前を覚えたり。
ほんと、無駄な時間。
それは分かっているけど、あたしはなんとなく落ち着けた。