世界中の誰よりも

そんなことを考えてるうちにも、足音はどんどん着いて来る。

家まではまだ距離がある。

どくん、どくんと心臓が騒ぎ出す。

走り出すと、それこそ一気に追いかけられるような気がしてできない。

足が絡まらないギリギリの速さで歩く。


あたしは上手く回らない頭でケータイのメモリをめくる。


あぁ、あたし。

誰も頼れる人なんか居ないんだ。

あたしが助けを求めれば絶対来てくれるって、確信を持てる人が見つからない。

あたしは必死で足音から逃げながら、だけど心の隅では失望していた。


足音はもう、すぐ後ろ。

その音に混じって荒い息遣いが聞こえる。
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