世界中の誰よりも
あたしはついに堪らなくなって走り出した。
足音もやはり早くなり、走って来ている。
ヤバい。
怖い。
そんな思いがあたしの脳内を支配していた。
あたしの震える指は一つの番号に辿り着き、発信ボタンを押した。
そしてそれとほぼ同時に、あまり速くないのに焦って走っていた足が絡まった。
バランスを崩した身体を持ち直すことができず、あたしはその場に転ぶ。
ケータイはその拍子に投げてしまった。
月が照らす僅かな光を、遮るのっぺりとした影。
あたしの心臓がヒュッと縮み上がる感じがした。