世界中の誰よりも
「でもあたし、すぐ携帯落としちゃったし……」
父に状況は伝えられなかった。
なのに、何で家を飛び出して来てくれたんだろう。
「幸が父さんに電話をかけるなんて、滅多にないだろ。それにすぐに切れたから、何かあったと思ったんだ」
父はそう言って笑っていた。
たったそれだけのことで、父は何かを察して探しに来てくれたのだ。
普段あんなに反抗しているあたしのこと。
今日だって門限を守らなかったあたしのこと。