世界中の誰よりも
席を立って鞄を手に取り、久しぶりに「行ってきます」と言ってみようかと思った時だった。
「もう少し待ちなさい」
父があたしを引き止める。
訳が分からず、あたしは首を傾げた。
すると玄関のチャイムが鳴った。
「お、来たな」
玄関の方を見やって、父が言う。
誰が来たんだろう。
こんな朝早くから。
「行きなさい、幸」
今引き止めたばかりの父があたしを促す。
あたしは全く訳が分からず、クエスチョンマークに包まれながら玄関に向かった。