世界中の誰よりも
母はあたしに紅茶を入れてくれた後、すぐにテーブルを離れた。
そしてせかせかと夕食の準備を始める。
お鍋を火にかけながら、野菜を刻む。
お鍋の様子を窺いながら、フライパンに溶き卵を注ぐ。
全ての手順が頭に入ってるんだな。
小さい頃はこうやって料理をする母の隣で、その日一日の出来事を話したりしていた。
マフィンを食べ終え、料理する母の姿をぼんやりと眺めていたら、母がチラリと振り返る。
「制服、着替えてきなさい」
あたしは頷き、テーブルから立ち上がる。
キッチンを出る時母を見ると、とても穏やかな顔をしていた。