世界中の誰よりも
「わりぃ、遅くなった」
廊下側から聞き慣れた低い声がして、見遣ると祐司が手を振った。
あたしは鞄をつかんで祐司の側に寄る。
「いいよ、あたしが急に誘ったんだし」
あたしと祐司はそのまま並んで玄関に向かう。
「どこで話す?」
「カフェにしようよ、祐司君の本屋のそばの」
祐司のバイト後に会った時に、一度利用したことがあるカフェ。
あまり広くはないけど、さりげなくお洒落であたしは気に入っていた。
「よし、じゃあ行くか」
玄関を出て、今日は自転車で来たらしい祐司に付いて駐輪場に回る。
あたしを荷台に乗せて、祐司は自転車を漕ぎ出した。