世界中の誰よりも
祐司が差し出したハンカチを目に押し付けて、あたしは呟くように言う。
「あたしに味方が居ないから、可哀相だから、かまってくれてたんでしょう?」
相変わらずハンカチに目を伏せたままだから、祐司の表情は分からない。
だけど次に聞こえた祐司の声は、少し怒ったような、呆れたようなトーンだった。
「幸は別に可哀相じゃないだろ。少なくとも俺はそんなつもりでお前と会ってたんじゃない」
ハンカチからゆっくりと顔を上げる。
アイメイクが少し落ちて、白いハンカチを一部染めてしまっていた。
「万引き未遂の後、何か言いたそうにしてたから。ちょっと話してみようって、単純にそう思っただけだ」